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第9話  

葵のすべての数値が正常であることを確認して、ようやく聡は満足して家に帰った。

彼は私にlineでメッセージを送り、今夜は家で夕食を取ると言っていた。

彼は、帰りを待っている私がエプロンをつけて、テーブルにたくさんの料理を並べ、まるで飼い主を待つ犬のように尻尾を振って喜んで迎える姿を想像していたのだろう。

だが、彼が予想していなかったのは、彼を迎えたのが冷え切った家の静けさだった。

彼はすべての部屋を探し回ったが、私の姿はどこにもなかった。そして、ついに携帯電話を取り出した。

彼はようやく私に電話をかけた。

私が死んでから三日目に。

スマホの向こうから聞こえてきたのは、予想通りの電源オフの音だった。

聡はスマホを床に叩きつけた。

「夕星!ダンマリ!ついに頭に乗ったな!いいだろう!お前が一生駄々をこね続けられると思うなよ!」

そう言って、聡は再びスマホを拾い上げ、長い指で勢いよくメッセージを打ち込んだ。

「夕星、今夜家に戻ってこなければ、もう二度と帰ってくるな!」

彼はそのメッセージを送ってから、携帯をソファに投げ捨て、さらに思い直して強い口調で続けた。

「もし今夜12時までに返事がなかったら、俺たちの結婚もなしだ!」

私は空中から彼を見下ろし、彼が自暴自棄になってネクタイを引きちぎる様子を苦笑いしながら見守っていた。

聡、今夜私は確かに戻らない。

そして、もう二度と帰ることはない。
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